yaunn Pottery story

作品は、人とつながるコミュニケーションツール。 -tupera tupera 亀山達矢 中川敦子 story #3

PHOTO RYUMON KAGIOKA

衣服や家具、食器など、生活を彩るさまざまな品々を、どんな風に選んでいますか?スペックが合うか、好みのデザインかは気になっても、つくり手や素材のこととなると、知っているようで知らないもの。もっと知ることで、自分のモノサシをもって自分にとっての「いいもの」を選べるようになるのでは?そう考えて、yaunnでは商品の背景にあるストーリーをご紹介しています。

yaunnの商品ラインナップに新たに登場した「はらぺこおばけ」は、おばけの形をした3枚1組の白いお皿。デザインを手掛けたのは、絵本や工作、アートディレクションなど幅広く活動する、亀山達矢さんと中川敦子さんによるクリエイティブ・ユニット「tupera tupera」(ツペラ ツペラ)です。

お2人に、これまでのアート活動や、作品の根本にある思いを語っていただきました。

コミュニケーションが生まれる仕掛けをつくる

2002年に活動を開始してから今年で20周年を迎えるtupera tupera。絵本作家としての活動がよく知られています。過去に出版された絵本は50冊ほど。絵本を年2~3冊のペースでつくりながら、テレビ番組制作やアパレルメーカーと組んでのものづくりなど、活動の対象は多岐にわたります。

tupera tupera 亀山さん

僕らのつくるものは、例えば本にしても<読むもの>というより<使うもの>。コミュニケーションツールとしての役割が大きいんです。

と、亀山さん。たとえば『しつもんブック』(2019年)では、「どんな花が好き?」「行きたい国は?」など、家族や友達、初対面の人ともコミュニケーションが生まれる100の「しつもん」が紹介されています。中にはジェスチャーで答える質問もあり、楽しく盛り上がれそうです。

『しつもんブック』はスマートフォンを模した形をしています。

tupera tupera 亀山さん

スマートフォンは遠くの人とつながれる利点がある一方で、目の前の人をおろそかにしてしまう。親や友人がどんな花が好きかなんて意外と知らないでしょう。知らないことだらけな目の前の相手のことを、質問して掘り下げてみませんか?という本なんです。
『しつもんブック』に限らず、tupera tuperaの本は変わった形や判型のものが多い。出版社さんや製本所さんを困らせつつも、『せっかくつくるなら面白いものをつくろう』と無茶振りしながらやっています。

デザイナーも現場も一緒に試行錯誤するのが楽しい

「無茶振り」と亀山さんが言うように、一緒にものづくりをするメーカーさんにとっては苦労も多そうですが、「試行錯誤しながらいいものができたときの喜びもまた大きい」と中川さんは言います。

tupera tupera 中川さん

私たちにとって、『作り手側が面白がっているか』はとても大事です。自分たちが依頼されたものに対しては、妥協なくつくっていきたい。オファーに対してできる限りのことを、現場の人たちとも一緒に試行錯誤しながらやっていくのが、この仕事の醍醐味だと思うんです。

tupera tupera 亀山さん

今は、本や雑貨だけでなく、空間演出や舞台の仕事など、いろいろな業種の方からご依頼をいただくようになりました。自分たちが考えてもみないような仕事のご依頼をいただいて、一所懸命受けることで枝葉が広がってきた。プロダクトの形はさまざまでも、人が使って、喜んでもらえることが嬉しいですね。

現場と一緒に試行錯誤しながら共同作業のように作品をつくり上げていく。それがtupera tuperaの創作活動の大きな特徴と言えるのかもしれません。またそれは、もの自体が出来上がっても続く、と中川さんは言います。

tupera tupera

アイディアだけ現場に投げてあとは形にしてね、というスタイルの人もいますが、私たちは、最終的に相手に届くところまで関わりたいと思っているんです。どんなお店にどんなディスプレイで置かれるのか、どんな風に売られるのか、というところまで。最後のところまで楽しみながら、関わらせてもらっています。

アイディアは「強引に引きずり出す」

さまざまな作品を手がけるtupera tuperaのお2人ですが、その豊かなアイディアはどんな風に生まれてくるのでしょうか。

「アイディアからスタートするタイプなので、いつもアイディアが溢れまくってるんだろうと思われがちなんですが、実際はそんなに出ないですね」と亀山さんは苦笑します。

tupera tupera 亀山さん

たとえばこの『きゅうきゅうブーブー』(2021年)は、キューブ状の絵本です。シンプルに見えますが、アイディアから形になるまでに5年かかっています。そんなにすぐできるものではない。アイディアは、湧いてくるんじゃなくて、強引に引きずり出すんです。

アイディアを強引に引きずり出す。意外とも思える言葉です。亀山さんは続けます。

tupera tupera 亀山さん

誰かに依頼されて仕事をするので、アイディアは必ず出さなくてはならない。だから、常に頭の中にスイッチのようなものを置いています。それで、ちょっと考えてみようかというときに、ふっと降りてきたり、強引に引きずり下ろしたりする。中川と話しているときや、車の運転中やランニング中に出てくることもあります。気持ちいいアイディアがやって来たときは、テンションが上がりますね。

2人いても役割分担はしない。流動的な関係性がアイディアを生む

「2人でやっているので、生まれてきたアイディアを言葉にして相手に伝えるプロセスが生じます。『思いついた!』とテンション高く話すと、彼女はそんなに盛り上がってなくて、顔色を見て「あ、だめだな」と思うこともあります。」と亀山さん。アイディアを言葉にしたり、話し合ったりすることで、より良いものに変化していく。それは、ユニットで活動しているからこその良さかもしれません。

そんな2人の関係性について、中川さんはどう捉えているのでしょうか。

tupera tupera 中川さん

ずっと2人で活動していますが、役割は固定してません。2人でたくさん話し合ってアイディアが出ることもあれば、片方がアイディアを主導して、もう片方が具体化の部分を中心に担っていくこともあります。それぞれ調子のいいとき悪いときがあるので、お互いピンチのときに助け合ってどうにかしている、という感じですね。

2人で、または、オファーをしてくれた企業や現場と。tupera tuperaの作品は、たくさんのコミュニケーションを通じて生まれていることがわかります。そして、生まれた作品から今度は使い手とつくり手のコミュニケーションが始まる。そんな姿が見えてきます。

たとえば、tupera tuperaの代表作ともいえる『かおノート』は、シールを貼って自由に顔をつくるワークブックです。亀山さんと中川さんの投げかけに対して、読者の私たちが自分の想像力を使って表現することで、両者の間にコミュニケーションが生まれていると言えそうです。

tupera tupera 中川さん

そんな風に一つのプロダクトを通じてコミュニケーションを取っていくやり方が、私たちの作風とも合っているように思います。

tupera tupera

亀山達矢と中川敦子によるクリエイティブ・ユニット。 絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、舞台美術、空間デザイン、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動している。著書「かおノート」(コクヨ)、「やさいさん」(学研教育出版)、「いろいろバス」(大日本図書)、「うんこしりとり」(白泉社)など多数。海外でも様々な国で翻訳出版されている。2019年に第1回やなせたかし文化賞の大賞を受賞するなど、さまざまな受賞歴も。武蔵野美術大学油絵学科版画専攻 客員教授、大阪樟蔭女子大学 客員教授。
https://www.tupera-tupera.com/

PHOTO RYUMON KAGIOKA

商品紹介 はらぺこおばけプレートセット

絵本や工作、アートディレクションなど幅広くアーティスト活動をする、亀山達矢さんと中川敦子さんによるクリエイティブ・ユニット「tupera tupera」(ツペラ ツペラ)のユニークなアイディアから生まれた、真っ白いおばけの形をした3枚セットのお皿。
製造は、美濃焼の産地・岐阜県土岐市にてオリジナル磁器ブランド「HAKU」を展開するカネ一古林商店が担いました。

はらぺこおばけプレート 3枚セット
はらぺこおばけプレート 3枚セット

真っ白でなめらかな素材に、tupera tuperaの生み出した表情豊かなおばけが線画で描かれた「はらぺこおばけプレート」は、異なるサイズの3枚のおばけプレートで構成されています。1枚ずつ使っても、3枚セットで盛り付けてもOK。3枚合わせるとゆるやかな円状になり、大きな1枚のプレートのように使うこともできます。同じ形のプレートをたくさん集めると、おばけの兄弟?!として使うことも◎
真っ白で自由なおばけプレートは、きっと、あなたの毎日を楽しくするでしょう。

毎日使うモノのことを知る、選ぶ力を磨く。

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