毎日使うモノのことを知る、選ぶ力を磨く。
友人とともに、今年も仕込んだ手作り味噌。仕込んだ後は、発酵を待つ時間となります。蓋を閉めているので、中の様子がどうなっているかがわからないのが楽しみでもあり、ちょっと不安にもなるところ。さあ、仕込んでから1ヶ月。どんな様子になっているでしょうか。
発酵を待つ間は、冷暗所で保存します。冷暗所とひとことでいっても、その場所にどんな菌がいるかによって発酵具合が変わるので、場所選びは結構迷います。
過去数年間で置いた場所は、日が当たらないウォークインクローゼットと、日当たりの悪い別の部屋の棚。できるだけ人の出入りが少ない場所がいいかなと思い、今年もやっぱり、いつものウォークインクローゼットに置くことにしました。夏でも一番涼しく、温度変化が少ない場所なんです。
さあ、1ヶ月経ったら、カビが生えていないかチェックします。恐る恐る蓋を開けて見ると・・・
表面の色が少し濃くなり、色の濃淡が出ているものの、縁のあたりをよく見てもカビは見当たりません。どうやら今回は今のところ、カビが生えていないようです。
初めて味噌を仕込んだ2015年は、ばっちりカビが。
上の黒いのが、カビです。やはり、空気に触れやすい縁の部分にカビが生えやすいようです。カビチェックをしたのが2ヶ月近く経ってからだったのもあり、今よりも発酵が進んでいるのがわかりますよね。
今年仕込んだ味噌も、これから気温が少しずつ暖かくなりもう少し発酵が進んだらカビが生えるかもしれないので、後日またチェックします。
さて、カビが生えていても慌てる必要はなし。カビの部分だけすくい取ってしまえば大丈夫です。表面をならし、再度アルコール消毒をして、ラップでピタッと蓋をすればOKです。
味噌樽をウォークインクローゼットに置いたら、後は再び、発酵が進むのを待つだけ。
そしてこの待ちの期間にも、年によって色々なことが起こります。
ある年は、ふと気づいたら味噌樽から液体があふれ、周囲にあった帽子やバッグ類がベタベタになってしまうという事件がありました。液体の正体は、発酵・熟成の過程で出てくる「味噌たまり」。この時以来、味噌樽を袋に入れてから、ウォークインクローゼットに置くようになりました。
そして昨年は、私の部屋の棚においていたのですが、あるころからいつもお部屋にアルコールの匂いがするようになりました。この部屋でお酒を飲むわけでもないし、アルコールスプレーがこぼれているわけでもない。理由がわからないまま2〜3週間は過ごしたと思います。
ふとした瞬間に顔が味噌樽に近づいたとき、ここから見事なアルコール臭がしていました。原因は味噌だったのです。気温が高かったせいか、発酵が過剰に進んでしまったようです。
同じように仕込んだのに、その年や置く場所によって、発酵の進み具合やカビの発生具合が変わってくるのも、手作り味噌の面白さですね。
2月に仕込んだ味噌は、夏頃にはいい具合に仕上がるはず。今年はどんな風味や甘みに仕上がるのか。味や香り、質感も毎年変わるので出来上がりが楽しみです。
さて、夏頃の若い味噌は、気温が高い時期ということもあり、我が家ではもっぱら野菜スティックのお供になります。キュウリや大根、ニンジン、セロリ。手作り味噌の味を楽しみながら、ポリポリ、ポリポリ、野菜を食べます。
もう一つの定番は、ナスとピーマン、豚肉の味噌炒め。暑い夏でも食欲が湧いてくる我が家のスタミナ食です。
秋になり気温が下がってきたら、毎日ひたすらお味噌汁! 私が作るお味噌汁は、とにかく野菜たっぷりの具沢山。お味噌汁とご飯さえあれば、とりあえず栄養は大丈夫でしょう◎ と言えるぐらい、冷蔵庫に残っている野菜はなんでも入れてしまいます。
そして冬になったら、子どもたちの大好物、豚汁の出番。一度にかなりの量を作るのでこのあたりで味噌の消費量が多くなり、毎年、年を越す前に底をついてしまうパターンです。小5の娘も一人で1樽仕込めそうになってきたので、来年は2樽仕込んでも良さそうです。
その他に、私の大好きな食べ方は、味噌焼きおにぎり。電子レンジがなかった子どもの頃、母が残った冷やご飯を握って味噌を塗り、オーブントースターで焼いてくれた味噌焼きおにぎりが、大好きでした。いまだに、当時の味は再現できないのですが。思い出の中の味は、超えられないですね。
刻んだ長ネギ、生姜、ニンニクと混ぜ合わせたネギ味噌も、最近のお気に入り。お肉や魚に塗って焼いても、厚揚げに合わせても、美味です◎
もちろん、市販のお味噌で作ってもいいのですが、市販の味噌の方が塩分が強く、ちょっと尖ったように感じることが多々。手作り味噌のいい香りとまろやかな味は、やっぱり格別です。時々、つぶし残しの大きめの大豆が出てきたりするのも愛おしさが増します。
慌ただしい毎日の中で、1年に1回の味噌づくりは、私にとって待つことと手をかけることの喜びを思い出させてくれる貴重な時間。手の平で感じる大豆の熱さや、麹に触れ手がすべすべになっていく感覚も、バーチャルの世界ではなく、今ここに生きている実感を取り戻させてくれる瞬間です。
気温が低いためゆっくり発酵が進む冬の「寒仕込み」が仕込みのおすすめ時期。この時期はもう終わりましたが、基本的に味噌づくりは真夏以外、いつつくっても大丈夫。まずは少量からでもいいので、自宅で味噌を作ってみませんか?
手前味噌、最高ですよ。
お腹が空いたら炊飯器のスイッチを押すだけでご飯が炊き上がるし、欲しいものがあればポチッとするだけで翌日には届く。読みたい本や見たい映画もスマホがあればすぐに見られる。必要なものやほしいものがすぐに手に入る私たちの生活からは、待つ時間、そして待つことを楽しむ時間がなくなりつつあります。
味噌づくりは、そんな私たちに待つ喜びを思い出させてくれるもの。子どもたちのためにも、年に1回の味噌づくりの機会を大切に、これからも続けていきたいな、と思います。
平地 紘子
ライター。大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身
「使う」「食べる」など、日常生活を通して考える力を養い、自ら思考し、判断する人を増やしたい。
yaunnは、身近な生活を通してものごとに興味をもち、自分の視点を養うこと。 それが、さまざまな問題を解決する一歩目になると考えています。
すべての人が自ら思考し、判断する力をもつ。
それによって、世の中はより良い方向へ変わると信じています。
yaunnについて、詳しくはこちらをご覧ください。
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